こんにちは、ヒデヨシです。
元内閣総理大臣で数々の話題を残した故・田中角栄氏。その数奇な生涯を描いた話題書『天才』(石原慎太郎 著、幻冬舎)は著者が田中角栄氏の生涯を一人称視点で描いたフィクション作品です。
“ 政治家には先の見通し、先見性こそが何よりも大切なので、未開の土地、あるいは傾きかけている業界、企業に目をつけ、その将来の可能性を見越して政治の力でそれに梃子入れし、それを育て再生させるという仕事こそ政治の本分なのだ。(P.47)
田中角栄氏は先見力と政治のあるべき姿を強く意識していました。この政治のあり方を数々の行動をもって実行していきます。
本書には田中角栄という人物の愛国心、先見の明をもった政治的な才能、人情深さなどが著者の深い洞察から見事に表現されています。特に、かの有名なロッキード事件についての記述からは深い苦悩を痛感せざるをえません。
今回は、田中角栄氏の愛国心と熱意を持った政治を表現したたとえ話と、ロッキード事件で権力とはどういうものかを悟った「掌の水」のたとえ話を本書より紹介します。
田中角栄はまさに将棋の名棋士
“ 今思えば、あの期間の時の流れというのは将棋の名人戦の長丁場のようなものだった。相手の長考の間、俺は小さな歩の使い様までを綿密に考えることが出来たのだ。(P.71)
田中角栄は内閣総理大臣になる前、自分の仲間を着々と増やしていきました。そのときの状況はさながら将棋の名人戦のようだったそうです。対抗馬とお互いの思考を読み合い、知略を巡らせ、相手を上回るように立ち回る、政治の奥深さを表しています。
また、歩の使い方まで綿密に考えています。大局をみる能力と局所的に歩兵を上手く使うことができる実行力のある名棋士だと表現している上手いたとえ話です。
日本をオールラウンドなピッチャーに
“ 野球のピッチャーに譬(たと)えれば、豪腕をふりかざして全力で直球を投げ込む投手よりも、時には変化球を交ぜながら体全体を使って投げるフォームに改造しないと長持ちはしないし勝率も上がりはしない。(P.90)
田中角栄は新幹線や飛行場などのインフラ整備を進め、企業を大都市集中モデルから地方分散モデルにシフトすることで、国民の移動コストを削減し、総生産量を向上させようとしました。日本全体を地域的にバランスのとれた経済状態にすることが経済成長に不可欠だとの考えからです。
その表現を野球のピッチャーにたとえています。豪速球を持ったピッチャーは確かに強いですが、変化球も使えるオールラウンダーを育て上げることによって、世界情勢の変化に日本が柔軟に対応できるようにしようと考えていました。
政治を悟った「掌の水」
ロッキード事件を機に、周りにいた人物が離れていきました。一時は内閣総理大臣に上り詰め、人望に溢れていた過去の田中角栄は悟りました。
“ ああ、権力というものは所詮水みたいなものなのだ。いくらこの掌で沢山、確かに掬ったと思っても詮のない話で、指と指の間から呆気なく零れて消えていくものなのだな(P.179)
政治と人の難しさが表されたたとえ話です。
信じて集めてきた仲間たちは「水」。掬ったとしても、とどまることはなく流れ落ちてしまいます。政治も人も生き物で動的。静的なものなど存在せず、常に変化し続けているのだということを田中角栄はあらためて悟りました。
その後、脳梗塞で体調を崩し1993年、満75歳で静かにその数奇な生涯を終えました。
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本書は著者が田中角栄にかわって執筆したものですが幼少のころからの心理描写が細かく表現されています。多くの書籍を参考に政治的な史実と併せてリアリティのある作品になっています。
田中角栄という人物、そして日本の政治を知る一つの視点として学びのある一冊でした。
以上、最後まで読んでくださりありがとうございました。
ヒデヨシ
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