facebook

2015年9月11日金曜日

格差問題と憎しみの連鎖を無くすために「ちょっと許す」|TED|


目次
コンビニで出会った2人の男
男の人生 ~レイスデンの場合~
男の人生 ~ストロマンの場合~
2人の男の人生が再び交わるとき
格差社会という「脳卒中」
格差問題と憎しみの連鎖を無くすために「ちょっと許す」
・まとめ


こんにちは、ヒデヨシです。


2001.09.11。


この歴史的な数字の羅列は誰もが記憶しているでしょう。「アメリカ同時多発テロ事件」。憎しみの連鎖は永久機関のように今も続いています。


作家であるAnand Giridharadas(アナンド・ギリダラダス)はその同時多発テロの裏で起きたコンビニでの1つの事件を本にまとめました。そんな小さな事件をなぜ取り上げたのか、今や世界が抱える移民問題、格差問題、憎しみの問題を解決できるヒントを見つけたからです。


今回はAnand GiridharadasのTEDカンファレンスから、現代のアメリカの様子を鋭く表現したたとえ話と憎しみの連鎖を絶ち切るための方法を提案します。




スピーカー:Anand Giridharadas(アナンド・ギリダラダス)

タイトル :A tale of two Americans. And the mini-mart where they collided「2つのアメリカの物語と、衝突の現場になったコンビニ」





コンビニで出会った2人の男



2001年9月21日、アメリカ・ダラスの小さなコンビニ。バングラデシュ移民のレイスデンはアメリカンドリームを叶えるためにレジを打っていました。そこにタトゥーの男ストロマンが入ってきます。普通の客と違かったのは手にショットガンを持っていたこと。


「おまえはどこの出身だ?」ストロマンが聞きます。言葉の訛りでレイスデンがアメリカ人でないことがわかます。白人至上主義を自称するストロマンはアメリカ同時多発テロの報復として理不尽にもレイスデンの顔をショットガンで撃ったのです。




男の人生 ~レイスデンの場合~


顔面を撃たれたにもかかわらずレイスデンは生きていました。右目、フィアンセ、仕事と住む家を失い、6万ドルの治療費という借金だけは残りましたが。


レイスデンの凄いところはその後のポジティブさです。「これはチャンスに値しない人間に訪れた、第2のチャンスなんだ」と新たな人生を歩む決意をしたのです。

全てを失ったタイミングを人生のリスタート地点としてレイスデンは前向きに働き、努力し、最終的には大手IT企業で年間数万ドルの収入を得るまでになりました。ついにアメリカンドリームを掴んだのです。


そして今度は世界に貢献するべく、イスラム世界と西洋世界の間にある憎しみの連鎖を絶つ活動に注力し、その方法に気づいたのです。




男の人生 ~ストロマンの場合~



貧しい地域で生まれ育ったストロマンはアメリカの若者の希望を打ち砕く3つの関門、すなわち「悪い両親」「悪い学校」「悪い刑務所」にいつも苦しんでいました。ドラッグや暴力がはびこる環境では希望は生まれません。


2001年9月21日、ショットガンで重傷を負わせたレイスデンの他に2人の命を奪っていたストロマンは決められた運命のごとく、死刑囚となりました。




2人の男の人生が再び交わるとき



憎しみの連鎖を絶つ方法、それは「許すこと」でした。


レイスデンは一度は自分の人生を狂わせたストロマンの全てを許しました。ストロマンの死刑の中止を求め、なんとテキサス州と州知事を相手取り訴訟を起こしたのです。


結果的には、残念ながらストロマンの死刑は執行されてしまいましたが、その数時間前に2人は事件以来の言葉を交わすことができました。レイスデンは憎しみの連鎖を絶つために、ストロマンは謝罪と感謝を伝えるために、お互いの気持ちを伝え合った2人の心は救われていたようです。


レイスデン

「私が最も哀れみ深く慈悲深い神に祈っていることを知ってほしい。私はあなたを許すし、憎んでもいない。憎んだことなどなかった。」

ストロマン
「あなたは素晴らしい人だ。心から感謝するよ。ありがとう、兄弟。」



格差社会という「脳卒中」



2人の男の数奇な運命を通して、Anand Giridharadasは話しを続けます。

全てを失ったにもかかわらず第2の人生で夢を掴んだ移民レイスデン。アメリカ育ちの白人にもかかわらず傷つき行き詰まった社会に住む死刑囚ストロマン。2人の男の物語はアメリカの抱える格差社会の光と闇を表していました。


アメリカで貧富格差が社会問題になっているのは有名です。格差社会は元気で若々しい肉体が脳卒中に襲われたような状態だとAnand Giridharadasはたとえます

現在のアメリカは脳卒中で半身麻痺になったように、左半身は生気が奪われ(ストロマン)、残りの右半身は驚異的な健康体(レイスデン)という状態に陥っているのです。

これは他人事ではありません。日本でも貧困率は年々上昇傾向にあります(貧困率とは所得が国民の平均値の半分に満たない人の割合)。1985年は12%だった貧困率は、2012年には16%となっています(各種世帯の所得等の状況|厚生労働省)。貧富の差は広がる一方で、日本も格差社会の脳卒中にかかっているのです。




格差問題と憎しみの連鎖を無くすために「ちょっと許す」


Anand Giridharadasは分裂した格差社会をもう一度1つにするためには、レイスデンと同じように、一人一人が自分の問題として引き受けるという道徳的な課題を解決しなくてはならないと言います。自分たちには一体何ができるのでしょうか。


1つ言えることは憎しみの連鎖を絶ったレイスデンのように「許す」ことが必要です。


「格差社会は今の大人達が作り上げたものだ!なんで俺たちがその尻拭いをしなくちゃならないんだ!」とは正直思います。でもそれでは前には進めないんです。


お人好しになれということではありません。「許す」ためには本当に多くのエネルギーがいります。そのためのエネルギーを私たちは日頃のストレスで消費してしまうのです。疲れてイライラしている状態で人を許せるわけないんです。

一度に全てを許せばいいとも思いません。全てを一度に清算しようとするから負のスパイラルが続いしまうのです。「この部分は許せない、でもこの部分は許そう」と部分的に少しずつ相手を認める心を持つことで、お互いが歩み寄ることができるのではないでしょうか。

大きな石が長い時間をかけて風化されて小さくなっていくように、ゆっくりではありますが、小さな「許す」を日頃から習慣づけていけば負のスパイラルも収束してきっと世界は変わります。他人の尻を拭くのはいやですが、少しずつ、ちょっとずつ「許す」を積み重ねていきましょう。


私たち大人が道徳的な模範となり、今の子ども達に伝えて、子ども達はさらにその子ども達に伝えていく。良い循環をつくっていくのは私たちなのです。



まとめ

・格差社会は「脳卒中」で半身麻痺したようなもの


・全てではなく「ちょっと許す」を積み重ねよう


・子どもの模範になろう



以上、最後まで読んでくださりありがとうございました。

ヒデヨシ



Photo by TED Conference via flickr




(参考)
・国民生活基礎調査(貧困率)よくあるご質問|厚生労働省
 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21a-01.pdf
・各種世帯の所得等の状況|厚生労働省
 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/03.pdf


【おすすめの関連記事】

怒りの発電所になって人の役に立ってみよう|TED|スーパープレゼンテーション

脳卒中になった脳科学者のアットホームで庶民的なたとえ話|TED|

【もう時代遅れ】ストレスは体に良いし、たとえ話も上手くなる|TED|スーパープレゼンテーション

金持ちになるほどたとえ話が下手になる!?|TED|スーパープレゼンテーション

Ubuntu(他者への思いやり)でたとえ話が上手くなる!?|TED|スーパープレゼンテーション

【TED】プレゼンのプロから学ぶ、上手いたとえ話の基礎


たとえ話が上手くなるサイト
PARABLE ANTENNA へ


たとえ話が上手くなるブログトップへ


ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ad