目次
・はじめに
・視聴率40%!女王陛下も登場する、世界一つまらない船旅ドキュメンタリー
・スローテレビが人気になった3つの理由
・「世界一つまらない」は地元トークのようなもの
・世界一つまらないたとえ話のつくりかた
こんにちは、ヒデヨシです。
あなたは今日、どんなテレビ番組を観たでしょうか。ニュース?スポーツ?バラエティー?ドラマ?アニメ?24時間昼夜関係なく様々なコンテンツのテレビ番組が放送されており、私たちは面白いと思う番組にすかさずチャンネルを合わせます。
ところが、ノルウェーでは世界一つまらないテレビ番組が国民的な人気を博しています。そのテレビのジャンルは「スローテレビ」。ストーリーも、台本も、ドラマも、クライマックスも何ない、ただ同じような映像を何時間も流し続けるだけにもかかわらず、ギネスブックに載る程の人気番組です。
その世界一つまらない番組をプロデュースしたのがノルウェーのテレビ番組プロデューサーであるThomas Hellum(トーマス・ヘルム)です。今回はヘルム氏のTEDカンファレンスから、なぜ退屈でつまらないテレビ番組が人気になったのかそのヒントを探っていきます。
そして、あなたの友達が高確率で共感してくれる世界一つまらないたとえ話のつくり方も学びましたので紹介します。キーワードは地元トークの「イライラ」です。
氾濫するメディアコンテンツに埋もれる日本人にこそ観てもらいたいプレゼンテーション、テレビ番組です!
スピーカー:Thomas Hellum(トーマス・ヘルム)氏
タイトル:The world's most boring television ... and why it's hilariously addictive
「世界で一番退屈なテレビ番組がやみつきになる理由」
視聴率40%!女王陛下も登場する、世界一つまらない船旅ドキュメンタリー
ヨーロッパにある平和で自然豊かな国ノルウェー。フィヨルド(氷河によって浸食されたU字型の谷)やオーロラなど自然の芸術展を目的に毎年多くの観光客が訪れます。
そんなノルウェーはメディアも平和なようで、ドラマティックな内容のニュースはあまりないのだそうです。2011年、ノルウェー放送協会(NRT)のテレビプロデューサーであるThomas Hellumは常識破りのテレビ番組でノルウェーのメディアに一石を投じます。
なんと5日半におよぶ生放送の船旅ドキュメンタリー番組「Hurtigruten(フッティルーテン)」を企画したのです。その内容はというと、遊覧船からノルウェーの美しい大自然を生放送で撮影するというもの。以上。That's all.ただのそれだけです。繰り返しますが5日半の生放送、風景を撮影する、ただのそれだけです。
一体誰が観るのか?そんな疑問と心配とは裏腹に、旅先の沿岸には多くの人々が集まり、ノルウェーの国旗を振りながら船の訪れに歓声をあげていました。コスプレをする人、5日間船を追いかけて映り続けた人、翌日の学校に遅刻してでもカメラに映ろうとした少年などノルウェーの多くの国民がこの番組に注目していました。
最終日にはなんとノルウェーの女王陛下がカメラの前に登場し、その瞬間Twitterではアクセス急増によりサーバーがパンクしてしまったそうです。
フッティルーテンはノルウェー国民約320万人(人口は500万人ほど)が視聴し、瞬間最高視聴率40%をたたき出しました。世界最長のドキュメンタリー番組としてギネスブックにも載る偉業を成し遂げたのです。
スローテレビが人気になった3つの理由
Thomas Hellumはこの他にも数多くのスローテレビ番組を打ち出しています。ペンキが乾くのをひたすら見る『ペンキが乾くのをみよう』、氷河がゆっくりと海を浮かぶ姿をひたすら見る『素晴らしき氷河レース』、おしゃべりをしながら薪を割り暖炉の火をひたすら見る『全国暖炉の夕べ』など、どれも数時間から数日間かかるものばかりです。
5日半の風景だけを映した生放送番組なんて、普通だったら即刻ボツになりますが、それが受け入れられるというのもノルウェーの平和な国柄なのかもしれませんね。それに加えて、退屈なスローテレビがノルウェー国民に受け入れられている理由をThomas Hellumは3つ示しています。
1.タイムラインを編集していない
時間を編集しないということは重要です。5日半の船旅をノーカットで放送することでリアリティが生まれ、実際に船旅をしている体験を視聴者に提供できました。
2.誰でも自由に参加できる
生放送で船が通るルートをあらかじめ告知しておき、視聴者が誰でも参加できるようにしました。多くの人(女王陛下までも)が自由に参加でき、皆で1つの楽しみを共感できるようにしたのです。ソーシャルメディアとの相乗効果によってさらに人々の交流が深まりました。
3.なにも計画しない
最も重要なのは何が起きるかを計画しなかったことです。134時間の番組にもかかわらず番組の進行表はたったの1ページのみ。何が起きるか誰にもわからないワクワク感を得ることができたのです。
Thomas Hellumはスローテレビをスポーツ観戦のようなものだとたとえます。スローテレビはカメラを持っていきそこで何が起こるかを見るだけで、ストーリーをつくるのはそこにいる「人」なのです。
そして、視聴者が番組のストーリーを自らつくったことも重要です。船旅の途中様々な風景が映し出されますが、その何もない風景をみて私たちはいろいろなことを想像します。「ここに行ったら何するかな」「あの農家の小屋に住むってどういう生活なんだろう」「スキーしたら気持ちいいだろうな」など、何もない風景から想像力をはたらかせて自分自身のオリジナルストーリーを空想するのです。
ゆっくりした風景と時間を通して自分が主人公になれるテレビ番組、人の数だけストーリーがあるのがスローテレビの醍醐味であり人気の秘訣のようですね。
今やスマートフォンの普及により、通り過ぎていく景色にさえ目を向けない時代です。世界一つまらないノルウェーのテレビから学んで、意識的につまらない時間を過ごすこともストレスで余裕のない私たちの社会に必要なのではないでしょうか。
「世界一つまらない」は地元トークのようなもの
Thomas Hellumの世界一つまらないスローテレビは、地元トークのようなものだと感じました。世界の人々から見れば「何が面白いの?」と言われるかもしれない番組ですが、ノルウェーの地元国民からすれば超ホットな話題の番組なのです。
多くの人がつまらないと感じるのはその番組の外側、コミュニティの外側にいるためです。
コミュニティの外側から見ると一体何が楽しいのかわかりません。パーティ会場でたくさんの友人と話す中、ある2人が地元トークで盛り上がっても周りの人はよくわからないためイライラし興味はなくなります。
逆にコミュニティの内側にいる人、地元トークをしている者同士はお互いの話がイメージ化しやすく共感も生まれるため、楽しくてしかたがありません。
この地元トークの構図と同じように「世界一つまらないテレビ番組」は見方を変えれば「ここだけなら世界一面白いテレビ番組」となります。これがノルウェー国民と世界各国の温度差の原因なのでしょう。
世界一つまらないたとえ話のつくり方
「世界一つまらないたとえ話」もとい「ここだけなら世界面白いたとえ話」は地元トークのような内輪ネタがあれば誰でもつくることができます。つくり方は以下の2ステップ。
1.他の人と一緒に何かしらの体験を共有する
2.その間近の体験をもとに、モノでも人でも具体的な名前をつかってたとえる。
旅行へ行ったなら「◯◯みたいな川の落ち方はもう奇跡的だったよな!」のように思い出話を元に語ればできあがりです。
クイック・レスポンスがクライアントに強い印象を与えられるのと同じように、過去の体験からたとえるまでの時間が早ければ早いほど強い共感が生まれます。鮮度が大事なのです。
一緒にいた仲間同士にしか伝わりませんが、コミュニティが狭いほど、思い出の鮮度が良いほど共感力は高くなり世界一つまらないスローテレビ状態になることができるでしょう。
いいじゃないですか、自分たちが楽しければ!世界一つまらないたとえ話で世界一面白い仲間と盛り上がりましょう!
以上、最後まで読んでくださりありがとうございました。
以上、最後まで読んでくださりありがとうございました。
ヒデヨシ
Photo by Annelogue via flickr
【参考】
外務省「ノルウェー基礎データ」
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/norway/data.html)
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