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2014年5月17日土曜日

復興支援で紙の家を建てるとたとえ話が上手くなる|TED|Shigeru Ban|スーパープレゼンテーション

photo credit: tedxtokyo via photopin cc

こんにちは、ヒデヨシです。

「紙」でできた家と聞いて、あなたはどんなものを想像するでしょうか。小さい頃に段ボールで小さな家を造ったことはありますが、実際に紙でできた家で生活するとなると誰しもが不安になるのではないでしょうか。

実は、その紙でできた家が地震などで被災した方々の仮設住居として今広がってきています。しかも丈夫で火や水に強い加工を施すことで10年以上も利用された建物もあるというから驚きです。

そのボランティア活動を積極的に進めているのが建築家である坂茂(バン シゲル)氏です。彼は建築家でありながら建設現場の第一線に身を置き、実際に仮設住宅をつくり、世界各国の被災者のために「紙の家」をつくる活動をしています。

今回はTEDカンファレンス(Eテレのスーパープレゼンテーションより)で紹介された坂氏のプレゼンから、仮設建物でありながら長く愛されるためのヒントを得ましたので紹介します。


スピーカー:Shigeru Ban(シゲル・バン|坂 茂)氏
タイトル :Emergency shelters made from paper「紙でできた避難シェルター」






坂茂氏は紙で建物をつくる建築家です。上の写真は紙でつくられた教会で、彼の作品の一つです。

紙といってもペラペラの紙ではなく主に建物の骨組みとして「紙管」を用います。紙管とは紙でできた筒のことです。身近なものでいうと料理を保存する時に使うラップフィルムの芯が当てはまりますが、そのラップの芯をさらに丈夫にしたようなものです。

さらに、紙といっても侮ってはいけず、紙管は強度性に優れており、防水加工も簡単にでき、産業資源のため耐火処理を施すのも簡単なのだそうです。再生紙を用いているためエコであり、他の建築材料に比べて安価であることが特徴です。

1986年から人々がエコロジーや環境問題に注目するずっと前から、紙が建築物の構造体(材料)として利用できるように強度試験など実用化に向けて研究を進めていました。

坂氏は1990年からパリのポンピドゥー・センターという美術館の建設に携わり、パリの文化的モニュメントとして高い人気を誇る美術館をつくりあげました。しかし完成に喜ぶ中、坂氏の心は揺らいでいたようです。

「多くの人が自然災害で家を失っているのに建築家は社会の役にも立っていない。そのことにとても失望した。」

建築家は人助けをしない、社会の役にも立っていないのに特権階級、金持ち、政府、開発業者のために働いているからだと辛口な批評をしています。歴史的に見ても、富裕層や権力者は「金」を使い「権力」を示すための象徴として立派な建造物を建築家につくらせています。エジプトのピラミッドは王の権力を示すために人と金を使ってつくられた建造物の良い例です。

「自然災害、たとえば地震そのもので人名は奪われない。建物が崩壊するために多くの犠牲が生まれるのだ。」
「建物が倒壊するのは建築家の責任だ。」

プレゼンで「kill」という表現を使用しているのがとても印象的です。建物が倒壊するのは建築家の責任であり、責任を全うできないがために多くの命を奪っている状況を坂氏は厳しく批判しています。

自然災害が発生しても仮設住宅を建てる場所におらず、特権階級のために忙しく働いている建築家(すべての建築家がそのような人だけではありませんが)の行動にも疑問を感じています。

坂氏はこの現状を改善するために
建築家でありながら自ら仮設住宅の建設に関わり、世界中の被災地で活動するようになりました。



阪神大震災や東日本大震災での復興支援活動


photo credit: designmilk via photopin cc

仮設住宅として紙管を使うメリットは安価であることです。なんと家一軒あたりの予算は50米ドル(1ドル100円換算でおよそ5000円)だそうです。しかも学生でも簡単に組み立て・解体が簡単なので、建設機材の入れない被災地にはもってこいです。

1995年1月17日に起きた阪神大震災では火災によって焼け野原となった地域もあります。このとき、大勢のベトナム人が利用していたとある教会も地震により全壊してしまいました。

坂氏はその神父に「紙管で教会を再建しないか?」と提案をしましたが「アホか!焼け野原の後に何を言っているんだ!」と一蹴されてしまいます。坂氏はあきらめずに提案を続けました。

その教会を利用していた被災者の多くは公園でビニールシートの粗末な家をつくり住んでいました。そこでまずは彼らのための住居を紙管で再建することを提案し、資金を集め50軒以上の紙管を使った仮設住居をつくりました。

50軒以上の仮設住宅を建てた実績により神父の信頼も得ることができ、紙管による教会再建が実現しました。この教会、実は3年間だけ使用する予定で建設したのですが、多くの人々から愛されなんと10年間も使用されました。

その後、台湾で災害があったときにこの紙管の教会を寄付してほしいとの依頼があり、解体して台湾に送りボランティアで再建しました。ここでも多くの人々から愛され恒久的な教会として今でも台湾に残っているそうです。


また、2011年3月11日に起きた東日本大震災でも宮城県女川町に海上輸送コンテナによる最高3階建ての仮設住宅をつくりました。坂氏の立ち上げたNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)のボランティア協力のもと、壁面収納棚などが設置され、今までの仮設住宅とは異なり快適に暮らすことができます。

この仮設住宅の建設は、政府の予算内におさめただけでなく従来の基準と同じ広さでデザイン性もよく、かなり住みやすいものができました。多くの被災者の方々が今後も長く住みたいと言っているそうです。



紙でできた建物が愛される理由


ここで考えさせられるのは何が恒久的で何が仮設なのか」ということです。

仮設的につくったものでも、人々から愛されれば長く利用され恒久的なものになるのだということを坂氏のプレゼンから気づくことができます。

実は仮設的な処置の結果長く愛されているものは身近に多く存在します。

たとえばホットドッグは仮設的な対処の結果人々に愛されたものの一例です。ホットドッグは元々焼いたソーセージのみが販売されていたのですが、食べるにも持つにも熱くて食べにくかったそうです。そこで、手が熱くならないようにパンに挟んで提供してみたところ大ヒットしたという話があります。今では人気のお手軽料理として世界中で愛され「恒久的」なものとなりました。

紙管を使った仮設の建物とホットドッグが愛される共通点、それは「相手への思いやり」が含まれていることです。

坂氏は言います。
「コンクリート造りでも金儲けのためにつくると一時的なものになるが、たとえ紙でつくられていても人々から愛されれば恒久的なものになり得る。」

「私はこれからも人々から愛されるモニュメントを建てていきたい」

坂氏の紙管でつくられた教会や仮設住宅は被災した人々の役に立ちたいという思いから行動し、その思いやりが認められ長く愛される建物となりました。ホットドッグはお客さんがソーセージを持つ時に熱くならないよう配慮した思いやりが結果的に人々から愛されました。

この「相手を思いやること」はたとえ話が上手くなる重要な要素です。相手の気持ちを考えることで、相手にとってわかりやすくて共感できる言葉を選択することができるようになります。今日からお互いのことを思いやり、「一時的な行為」「恒久的な好意」になるように行動してみましょう。小さな親切が思わぬきっかけになって長く良好な関係を築けるかもしれません。



まとめ


・「一時的な行為」は「恒久的な好意」になる

・相手を思いやることで、たとえ話は上手くなる


他者への思いやりでたとえ話が上手くなるヒントは以前の記事「Ubuntu(他者への思いやり)でたとえ話が上手くなる!?にて紹介していますので併せて参考にしいただければ幸いです。

以上、最後まで読んでくださりありがとうございました。


ヒデヨシ

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